顎矯正手術 Q&A

Q:入院期間はどのくらいですか?

A:下顎骨骨切り術のみの場合は7日間,上下顎骨切り術の場合は8日間です。骨延長術を行う場合は,骨の延長量によって入院期間が延長します。

Q:自己血は貯血しますか?

A:他人の血を輸血すると感染症(肝炎やAIDSなど)が生じる可能性がありますので,自分の血を貯血しています。手術の5~1週間前に貯血(400ml/回)を行います。上下顎骨切り術の場合は400mlの自己血貯血を行いますが,下顎骨骨切り術のみの場合は行っていません。

Q:上顎骨骨切り術を行うと鼻が変形しませんか?

A:鼻の形態変化を防止する方法を行わないと鼻が横に拡大します。そのため,当科では複数の変形防止法を行っており,術後の鼻の形態は良好に保たれています。

Q:血を抜くためのドレーン(管)はどこから出ますか? いつ抜けますか?

A:下顎骨を移動する手術(前歯部歯槽骨切り術を除く)を行う場合には,口の中の奥歯の外側の粘膜を切開しますので,その傷から左右それぞれに1本ずつドレーン(管)を留置します。血がたまることで血腫が生じ,気道が狭くなったり,感染したりしますので,ドレーンを入れて血を排出します。術後2日目の朝にドレーン(管)を抜きます。

Q:経管栄養(鼻からチューブを胃に入れて栄養剤を投与する)は行いますか?

A:当科では経管栄養は行いません。術後2日目の朝に口の中のドレーンが抜けたら,お昼から柔らかい食事を口から食べられます。術後2日目まで経静脈栄養(点滴で栄養を補給する)にしています。

Q:骨切り術の合併症にはどんなものがありますか?

A:痛み(痛み止めでコントロールできます)・腫れ(術後2・3日目がピークで徐々に改善します)・感染(抗生剤を予防投与します)・出血はどのような手術でも生じることがありますが,自己血以外の輸血をしたことはありません。その他の合併症の主なものとしては,以下のものがあります。

気道閉塞:術後出血や極度の腫れによって気道が圧迫されて息ができなくなることですが,当科では一度も経験したことはありません。しかし,数年に1回くらい他の施設で生じているとの報道がありますので,術後の管理はしっかりと行っています。
オトガイ神経麻痺:下顎骨の骨切りを行うと,下顎骨の中に走っている神経が露出することがあります。この神経がダメージを受けたり,圧迫されたりすると神経麻痺が生じることがあります。この神経は知覚神経(感覚の神経)ですので,麻痺が生じるとオトガイ部や下唇の間隔が鈍くなることがあります。麻痺が出ることのほうが少ないですが,生じても通常は徐々に改善してきます。
眼窩下神経麻痺:上顎の骨切りを行う時に組織を剥離しますが,歯と眼のちょうど間くらいの位置の骨にこの神経があります。神経を損傷することはないですが,組織の牽引により神経が引っ張られて,一時的に神経麻痺が生じることがあります。この神経も知覚神経のため,麻痺が生じると頬部の皮膚の感覚が鈍くなります。麻痺が出ることのほうが少ないですが,生じても通常は徐々に改善してきます。

Q:術後はどういう管理が行われますか?

A:顎の骨切り術を行うと気道への影響が少なからず生じます。そのため,術後はHCU(ハイケアユニット:ICU(集中治療室)ほどではないですが,手厚い看護が受けられる病棟)に入室し,翌朝までしっかりとした管理を行います。当科では術後に気道閉塞などのトラブルが生じたことは一度もありませんが,緊急時にも迅速かつ適切な対応が取れるように,主治医かつ執刀医の岩井先生が当直しています。術後1日目の午前中に一般病棟に戻り,普通の入院生活を送ります。