口腔癌

口腔癌 に対する逆行性超選択的動注法のためのカテーテルナビゲーション手術の開発

 浅側頭動脈や後頭動脈からの逆行性の超選択的動注法におけるカテーテル留置成功率を向上するために(100%に近づけるために)、カテーテル先端の位置を術中リアルタイムに同定できるナビゲーションシステムを東京大学工学部との共同で開発しています。
 磁気式ナビゲーションシステムを用いてカテーテルナビゲーション手術を行うためのソフトウェアを構築し、精度の検証を行い,現在カテーテルナビゲーション手術の臨床応用を目指しています。

口腔癌 に対する動注化学療法における至適投与量の検討

 外頸動脈と口腔癌 の栄養動脈であるその分枝をCT angiographyのデータを基に3次元血管モデルとして構築し、流体解析を用いて血流シミュレーションを行うことにより、各動脈へどの程度血流が分配されるかを解明しています。最終的には、口腔癌 原発巣や頸部リンパ節転移へどの程度抗癌剤が流れるかをシミュレーションすることで,抗癌剤の至適投与量を解明したいと考えています。

新規磁性体を用いた新しい癌治療法の開発研究

 横浜市立大学で開発された新規磁性体は磁石にくっつくという性質のみならず抗がん剤としての性質も有します。そのため、磁石を用いて投与された本磁性体を腫瘍に集積させることで、少ない投与量で高い抗腫瘍効果を発揮することが可能です。
 さらに本磁性体は高周波磁界装置を用いることで発熱することから温熱療法(ハイパーサーミア)として応用できます。従来の抗がん剤以上の抗腫瘍効果が得られることが証明できれば、局所での集中的治療、投薬量の軽減が期待できるようになります。現在は家兎を用いた動物実験を行っていますが、将来的には臨床応用を目指しています。

癌の普遍的環境である低酸素に注目した癌の微小環境変化に対する応答性についての研究

研究背景

   腫瘍血管が癌進展と転移に大きな役割を果たす事から血管新生阻害薬は新たな癌の治療法として高い注目を集めている。最近の研究で我々は局所に既存する腫瘍血管からの血管新生(angiogenesis)が放射線照射や抗癌剤によって抑制された際に骨髄細胞の著しい腫瘍内への誘導が起こり、それにより腫瘍血管の再構築(vasculogenesis)が引き起こされることを見出した(図1)。つまり、既存の血管を標的とするだけでは不十分で、骨髄細胞による脈管形成をターゲットにする必要がある事が明らかとなった。
 実際、これら骨髄細胞の誘導を分子阻害剤で抑制することにより、腫瘍血管の再形成が抑えられる事が見出された1。一方で、未治療癌では阻害剤はほとんど効果を示さなかった事から、未治療癌と再発癌においては腫瘍血管の性質が異なり、治療としてのターゲットも異なる事が示唆された。

今後の展望

 腫瘍血管をターゲットとした抗血管療法の研究や臨床試験は現在アメリカを中心として国内外で活発に行われているが、VEGF阻害薬など、それらの殆どが既存の血管を標的とするいわばanti-angiogenic therapyであり、また期待される程の成果が見られていないのが現状である。我々の研究で、癌治療後の微小環境変化の分子機構を明らかにする事によって、局所血管だけでなくanti-vasculogenesisをもターゲットとする全く新規の抗癌血管療法の開発に繋がることが期待される。さらに放射線化学療法に付随して抗血管再形成を行うことで手術などの外科治療を回避することが期待されることから、機能的・審美的要因から温存が望まれる口腔癌治療において飛躍的な発展を望む事が出来ると思われる。

  • Kioi M, Vogel H, Schultz G, Hoffman RM, Harsh GR, Brown JM. Inhibition of vasculogenesis, but not angiogenesis, prevents the recurrence of glioblastoma after irradiation in mice. J Clin Invest, 120: 694-705, 2010.