有病者歯科治療

有病者歯科

 当科では有病者歯科診療も取り扱っています。高血圧症の患者さんに対する血圧管理下での歯科処置、糖尿病の患者さんに対する血糖コントロール下での歯科処置および厳重な感染管理、心疾患の患者さんに対する心拍監視下の歯科処置といった一般の歯科医院では対応困難な全身管理を必要とする歯科診療を行っています。また、脳血管障害がある患者さん、ウイルス感染症の患者さん、免疫不全症、心身症、歯科治療恐怖症の患者さんなど歯科診療の際に特別な配慮を要する患者さんについても医学部附属病院の特性を生かして診療を行っています。さらに、骨髄移植時の感染源の除去のために行う歯科処置、全身麻酔ための挿管時や内視鏡検査時の歯の保護といった他科での診療が円滑に行われるために必要な歯科処置も行っています。

横浜市立大学附属病院歯科・口腔外科のHIV感染者/AIDS患者の診療状況

 当科では1993年よりHIV感染者の歯科診療を行っています。感染者の増加に伴い当科を受診する感染者の数も年々増加しており,最近では年間25人ほどの初診患者が受診しています。この数は県内で1-2位の診療実績となっています。
 診療は一般的な歯科診療およびHIV関連口腔疾患について行っています。一般的な歯科診療は保存処置,補綴処置,埋伏智歯の抜歯・インプラント埋入などの口腔外科処置など多岐にわたっており,HIV感染者の特性を考慮して診療を行っています。口腔カンジダ症,カポジ肉腫,口腔毛様白板症などHIV関連口腔疾患については当院感染症科と連携し,その診断と治療を行っています。特に,帯状歯肉紅斑,壊死性潰瘍性歯肉炎・歯周炎などのHIV関連歯周疾患の治療と管理に関しては力を入れており,積極的な介入により多くの改善症例が見られています。 近年,HAART療法が取り入れられたことによってこれらHIV関連口腔疾患は減少傾向が見られますが,HIV感染症の病状の指標としての口腔症状の重要性は増しています。最近,当科では口腔症状を指標として抗HIV薬の耐性ウイルスの出現の監視なども行っています。
 社会的貢献としては,神奈川県HIV歯科診療ネットワークの第三次診療機関として登録されており患者の受け入を行っています。また,このネットワーク構築の一環として神奈川県および神奈川県歯科医師会が主催するHIV歯科診療講習会では講義,実習を担当して指導的役割を担っています。さらに,当院は神奈川県のエイズ治療中核拠点病院に選定されており,拠点病院などの医療従事者を対象として様々な研修活動を行っています。当科はこれら研修活動にも積極的に協力しており講演,実習など担当しています。