超選択的動注化学療法

 1990年代に入り、癌組織に栄養を送りこんでいる動脈に直接抗癌剤を注入し、同時に放射線を照射する超選択的動注化学療法が開発されました。通常、抗癌剤は静脈から投与しますが、がんに栄養を供給する動脈から直接抗がん剤を投与することによって、静脈から投与する方法と比較すると高い濃度の抗がん剤ががんに行き渡り、より高い治療効果が期待出来ます。この方法と放射線療法を同時に行うことによって原発(もともとあった口腔内の癌)の手術を回避することも可能となりました。
 この治療方法を行うことによって、食べる、話す、飲み込むといった機能障害を最小限にすることができ、患者さんのQOL(quality of life=生活の質)は維持されるようになりました。口腔がん に対する超選択的動注療法は耳の前あるいは耳の後ろにある動脈(浅側頭動脈、後頭動脈)からカテーテル(管)を挿入し、造影剤や染色液を用いて腫瘍に栄養を供給している動脈(顎動脈、顔面動脈、舌動脈)にカテーテルを挿入する方法とそけい部の大腿動脈からカテーテル挿入を行うセルジンガー法の2つの方法があります。
 横浜市立大学附属病院 歯科口腔外科では浅側頭動脈あるいは後頭動脈からカテーテルを挿入する方法を取り入れています。この方法は治療中、カテーテルを動脈内に留置することができるため、化学療法と放射線療法と同時に行うことが可能となりました。すなわち抗がん剤投与に合わせて放射線の照射を行うことができることから治療効果がさらに期待でき、従来手術が必要であった進行口腔がん でも原発の手術回避が可能となりました(写真A,B)。

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写真A 上顎歯肉癌(治療前)
写真B 超選択的動注化学放射線療法後